
武蔵野市議会議員の報酬引き上げ、市民理解は得られるのか?
武蔵野市議会で、議員報酬の引き上げを巡る議論が行われた。
この議案は、特別職報酬等審議会(以下、報酬審)の答申を受けて、市長から上程されたもの。
審議では、市民の理解を得られるかどうか、賛否が分かれたが、最終的には賛成多数で可決。
4月から増額となる。
私も、この議案に賛成した。
なぜ賛成したのか?
議員報酬の引き上げには賛否が分かれた。
反対意見として「市民の実質賃金が下がる中で、議員報酬を上げるのは妥当なのか」という主張があった。
一方で、報酬審の答申や議員の職務量の増加を理由に、引き上げを支持する意見もあった。
私は「議員の役割の変化」と「社会経済情勢」を考慮し、報酬引き上げに賛成した。
1. 議員の役割と業務量の増大
前回改定された1996年と現在を比較すると、議員の負担は大きく増えている。
議員が担うべき業務や責務の変化は、市政運営の重要な要素になっている。
- 議員定数は2007年に30名 → 26名へ削減
定数削減により、1人当たりの業務負担は増加した。 - 議員1人あたりの市民数は約4,300人 → 約5,700人へ増加
市民対応や地域課題の調査・解決に要する時間が増大。 - 一般会計予算(議員1人あたり)も約19億円 → 約28億円へ拡大
予算規模の増加に伴い、適正な財政運営の監視が求められる。 - 本会議・委員会の審査時間は約58時間 → 約120時間へ倍増
行政報告の増加や議論の深化により、審議時間が長期化。 - 広報・広聴活動の充実
市民との意見交換会や子ども議会の開催、本会議・委員会のインターネット中継の導入。
これらを考慮すると、議員の報酬を据え置いたままでは、役割に対する正当な評価とは言えない。
2. 物価と賃金の上昇
近年の経済動向を見ても、賃金上昇の流れは無視できない。
- 民間企業の賃上げは 5%台
- 公務員の昇給は 2%台(人事院勧告)
議員報酬は生活給ではないが、専業議員が増えた現状を考慮すれば、市民の一定の理解は得られると判断した。
もちろん、賃上げの恩恵を受けられない人もいる。
だからこそ、会計年度任用職員を含む待遇改善や、物価高騰対策を進めることが必要。
市民の負担を軽減しながら、議員の職務を適切に評価するバランスを取ることが重要だ。
議員報酬の改定内容
武蔵野市議会議員の報酬は、1996年以降28年間据え置かれていた。
今回の改正により、議員報酬は2%引き上げられ、56万1000円となる。
一方で、議員以外の特別職(市長、副市長、教育長など)は、2011年に一度引き下げられ、今回の改定で一部回復。
しかし、議員報酬は一度も下がることなく維持され、今回さらに引き上げられる。
武蔵野市の議員報酬、他市との比較
現在の武蔵野市議会議員の報酬(55万円)は、多摩26市の中で3番目 に高い。
今回の改定で 56.1万円となり、八王子市(61万円)に次ぐ2番目 となる。
2024年度に議員報酬を引き上げた自治体は、狛江市(46.5万円)とあきる野市(42.3万円)。
これらの自治体と比較すると、武蔵野市の報酬は もともと高水準にある ことが分かる。
反対意見への考え
「市民理解が得られないのでは?」
確かに、市民の賃金は上がらず、物価高騰の負担が重くなっている。
しかし、議会の役割が大きくなり、議員の責務が増えている以上、報酬を見直すことは必要。
市民生活を守る施策を同時に進めることが重要だ。
「名目・実質賃金は下がっている」
1996年以降、日本の労働者1人当たりの実質賃金は445万円 → 371万円(74万円減)。
名目賃金も 1997年を100とすると、2024年は98.29(微減)。
確かに、市民の賃金が下がる中で、議員報酬だけを上げることには慎重な判断が求められる。
しかし、この30年で議会の役割が変わり、業務量も増えている事実を考慮する必要がある。
政務活動費を増額すべきでは?
「議員報酬の増額ではなく、政務活動費を増額すべきではないか?」
この点について、報酬審では議論されなかった。
多摩26市のうち、5市は報酬審で政務活動費の議論をしている。
「議員活動の充実を考えるなら、報酬よりも政務活動費の見直しが先ではないか」という意見もある。
政務活動費の使途拡大や、SNS等の広報活動への活用を検討するべきだ。
今後の課題
今回の改定で、武蔵野市議会議員の報酬は多摩地域で2番目に高い水準となる。
しかし、市民の生活が厳しさを増す中、「この引き上げは適切なのか?」という議論は続くだろう。
また、政務活動費の活用、議員の働き方、報酬のあり方 についても、より踏み込んだ議論が求められる。
結論
報酬審の答申は、多様な意見を踏まえて「報酬引き上げが妥当」と判断した。
私は、この議会の役割の変化と業務量の増大を考慮し、賛成した。
ただし、報酬を上げる以上、市民の信頼を得る努力は必須。
物価高騰対策や、会計年度任用職員の待遇改善、市民が納得する政治の実現に向けて引き続き取り組んでいきたい。
関連リンク:
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