府中刑務所を視察|再犯率や処遇の実態と社会復帰支援の現場

先日、府中刑務所を視察し、施設の概要や収容状況、処遇の実態について説明を受けた。刑務所は社会から隔絶された場所という印象が強いが、実際には「再び社会に戻るための場」として様々な仕組みが動いていた。
基本情報
職員数は約600名。敷地面積は26万2,187㎡で、東京ドーム約5.6個分に相当する。収容定員は2,668人。再犯リスクの高い日本人受刑者、暴力団関係者、高齢者、障害者、外国人受刑者など幅広い背景をもつ人々が収容されている。外国人受刑者は約400名で、国籍は60か国、言語は50を超える。府中刑務所は医療重点施設に指定され、障害や介護を必要とする受刑者への支援体制も整っている。
収容先の決定基準
日本各地に刑務所があるが、どこに収容されるかは刑期の長さで決まる。外国人受刑者については刑期よりも、言語や宗教など「その刑務所で対応が可能かどうか」が重視される。府中刑務所には多様な受刑者が集まる仕組みになっている。
日本人と外国人の再犯率
府中刑務所に入る日本人受刑者の多くは再犯者である。初犯は5.5%、2回目は23.8%、最多は20回で、平均すると4.8回の受刑歴をもつ。一方、外国人受刑者の98%は初犯である。多くは薬物密輸で空港で検挙され、裁判を経て収容される。出所後は母国へ送還され、日本に再入国できないため再犯率が極端に低くなる。
過剰収容の対応
刑務所は「定員満杯で収容不可」とはならない。定員を超える場合、6人部屋に8人、1人部屋に2人を収容することもあった。布団が敷けない状況ではベッドを導入し、立体的に寝る工夫で対応してきた。現場の柔軟性と規律維持の両立がうかがえる。
受刑者の日常と処遇
受刑者の生活は規則正しく構成されている。起床は6時45分、就寝は21時。日中は作業や教育指導に従事し、夕方には運動や入浴、点検などを行う。作業は木工、印刷、金属、洋裁など多岐にわたり、職業訓練では自動車整備士、フォークリフト、介護職員初任者研修などが実施される。教育面では識字教育や生活指導に加え、心のケアにも力を入れている。懲役刑から拘禁刑に変わったことで、一律の労働ではなく個々に応じた処遇が重視されるようになった。
各部屋にはテレビが設置され、自室では自由に視聴できる。刑務官は受刑者を「◯◯さん」と呼び、番号で呼ぶことはしない。番号は点呼の際など、混乱を避けるために限定して使われる。
ただし、再犯の受刑者に関しては、人間関係において一定の信頼関係が築かれていることも多く、「さん付け」で呼ぶことで逆に距離を感じてしまう者もいる。そのため臨機応変に個別対応が行われ、呼び捨てで呼ぶ場合や、受刑者が刑務官を「おやじさん」と呼ぶケースもある。社会で親身になってくれる人がいなかった者にとって、刑務所内で初めて信頼関係を築いたと感じる場面である。しかし一方で、出所後に社会で人間関係を構築できず、再び犯罪を犯して戻ってきてしまうケースもある。
医療・福祉支援と介護
府中刑務所には医師、看護師、薬剤師、理学療法士などが配置され、HIVや肝炎などの治療も可能である。高齢化に伴い介護が必要な受刑者が増えており、生活支援やリハビリが行われている。介護を担うのは職員だけでなく受刑者自身でもある。介護を受けるだけでなく、介護を行う側として技能を身につけることで、社会復帰へのステップにもつながる。
外国人受刑者への配慮
府中刑務所には60か国以上の外国人受刑者が収容されている。多言語対応や通訳の配置、宗教的配慮、食習慣への対応など、文化的背景を尊重した処遇が行われている。
社会復帰支援と出所後の現実
出所後の就労や住居の確保は再犯防止に不可欠である。府中刑務所ではハローワークや福祉機関と連携し、就労支援や生活支援を行っている。仮釈放者向けに宿泊や生活支援を行う施設も存在する。しかし、刑期を満了して出所した後の行方を刑務所が追うことはできない。職員としては真っ当に社会復帰してほしいと願うが、出所後に関わることは一切できない。
視察を終えて
府中刑務所を視察して感じたのは、「懲らしめの場」ではなく「矯正と支援の場」であるということだ。高齢化や障害、外国人受刑者の増加といった課題に対応し、心のケアや福祉支援を重視する姿勢は現代社会を映している。刑務官が「さん付け」で呼び、テレビ視聴を許し、介護を通じた技能習得を行わせ、過剰収容にはベッドを使った工夫で対応してきた。こうした現場の知恵は、人間性を尊重しながら矯正を進める姿勢の表れである。
一方で、出所後の受刑者に刑務所職員が関われない現実には制度的な限界がある。最終的には地域や社会全体で受け皿を整えることが不可欠であると強く感じた。
関連リンク
法務省:府中刑務所
府中刑務所見学会(市民向け)の開催について(府中市)


