
武蔵野市総合防災訓練を見学して
10月19日(日)、市立大野田小学校を会場に「令和7年度 武蔵野市総合防災訓練」が実施された。
首都直下地震を想定し、市・消防・警察・医師会・日赤奉仕団・地域防災組織などが一体となって行うもので、初動対応の確認と連携強化を目的としている。
計画に沿った訓練、地域参加の厚み
今回の訓練は土日に行われ、地域住民や自主防災組織の参加が多かった。
避難所開設、救助活動、要配慮者支援、ペット同行避難など、多様なプログラムが設定されており、平時の段取りを確認する場として高い完成度を感じた。
一方で、災害はいつ発生するか分からず、昼夜も問わない。
避難所の運営を担う人材が常に揃うとは限らず、人員の偏りや情報の遅延を前提とした備えが必要になる。
「人がいる」ことを前提とした訓練には限界がある。
想定外の雨、スムーズでスピーディな対応
訓練の途中、小雨が降り出すという想定外の事態が発生した。
しかし、現場では雨への対応が迅速に行われ、混乱はほとんど見られなかった。
指揮系統や役割分担が機能しており、現場の反応速度と柔軟性を確認できた点は大きい。
計画外の事象に対しても落ち着いて行動できる組織力は、日頃の準備の賜物だと感じた。
机上訓練と現実のギャップ
総合防災訓練は、計画の確認と共有において非常に有意義だ。
しかし、実際の有事ではイレギュラーに次ぐイレギュラーが発生する。
通信の途絶、道路の寸断、人的不足、情報の錯綜――。
訓練通りに進むことの方が少ない。
だからこそ、想定外を想定する訓練が必要になる。
机上での想定やマニュアルに頼りすぎると、現場では判断が遅れ、混乱を招く。
計画を磨くことと同時に、「計画が崩れたときどう動くか」を考えることが求められる。
ブラインド訓練の導入を
次の段階として、事前に内容を知らせない「ブラインド訓練(抜き打ち型訓練)」の導入を検討すべきだ。
いつ、どこで、どんな状況が発生するかをあえて伏せた状態で実施することで、判断力や連携力を試すことができる。
想定外に直面したとき、誰がリーダーシップを取るか。
情報が途絶したとき、どう共有を図るか。
その現場の反射神経を磨くことこそ、真の防災力につながる。
計画を磨き、想定を裏切る
今回の訓練は、計画に沿った手順確認という意味で成功していた。
そこに、想定外の雨という現実の要素が加わったことで、より実践的な内容となった。
これからは、「計画通りに動く力」と「想定を裏切られたときの対応力」を両輪で高めることが求められる。
計画を磨き、想定を裏切る――その繰り返しが、武蔵野市の防災力を確かなものにしていく。
関連リンク
令和7年度総合防災訓練


