選挙事務所で来場者に提供できる飲みものもお茶は良くて、コーヒーは禁止されているというほど現代社会とはかけ離れているところもある。看板の規定においては提灯の取り扱いまで定められている。当然だがインターネットの登場などは想定されていなかった。
そこで平成25年5月31日に公職選挙法の改正が公布され、同年6月30日から施行された。いわゆるネット選挙解禁だ。
総務省による説明では次の項目が変更点として挙げられている。
1.ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁
2.電子メールを利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁
3.選挙運動用有料インターネット広告の禁止等
4.インターネット等を利用した選挙期日後の挨拶行為の解禁
5.屋内の演説会場内における映写の解禁等
6.その他
今回は上記の中の1.について、ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布について、理解をしていない人による悪質な誤情報の拡散が見受けられたので説明をしたい。
改正公職選挙法第142条の3第1項
第百四十二条第一項及び第四項の規定にかかわらず、選挙運動のために使用する文書図画は、ウェブサイト等を利用する方法(インターネット等を利用する方法(電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下同じ。)の送信(公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)により、文書図画をその受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示させる方法をいう。以下同じ。)のうち電子メール(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第一号に規定する電子メールをいう。以下同じ。)を利用する方法を除いたものをいう。以下同じ。)により、頒布することができる。
わかりやすく言えば何人も、ウェブサイト等を利用する方法* により、選挙運動を行うことができるようになります、ということだ。
* ウェブサイト等を利用する方法とは、インターネット等を利用する方法のうち、電子メールを利用する方法を除いたものを指し、ホームページ、ブログ、SNS、動画共有サービス、動画配信サービス等のことだ。

そして選挙運動期間に行われた選挙運動用文書図画の頒布は選挙期日当日(投票日)もそのままにしておくことができる。例えば選挙期間中にX(旧ツイッター)などで例えば1日100回一週間、合計700回も特定候補者への投票を呼びかけたとして、ブログ記事を何百何千と書こうとも、投票を促す画像をホームページに掲載しようとも投票日当日にそれらを削除しなくても良いということだ。そのことは公選法の中で次のように定められている。
改正公職選挙法第142条の3第2項
選挙運動のために使用する文書図画であつてウェブサイト等を利用する方法により選挙の期日の前日までに頒布されたものは、第百二十九条の規定にかかわらず、選挙の当日においても、その受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に表示させることができる状態に置いたままにすることができる。

要するに選挙運動期間において、電子メールを除くインターネット上で行った投票依頼については、投票日当日もそのまま掲示することが認められている。
今回の東京都知事選挙において、立憲民主党東京都第18総支部長である松下玲子さんは、告示後の選挙運動期間中にXのヘッダーを蓮舫候補への投票を依頼するものに差し替えた。

プロフィールヘッダーには2024年の東京都知事選挙での蓮舫候補への投票依頼がある。
当然だが、これはいわゆる選挙運動用文書図画の頒布にあたる。選挙期間運動中に掲示することが認められており、改正公職選挙法第142条の3第2項によって投票日当日もそのままにしておくことができる。
これについて一部の方々より公職選挙法違反であるという指摘がなされている。これに対しては改正公職選挙法第142条の3第2項に基づき違反ではありませんというほかにないのだが、いまだに誤った情報の拡散が続いている。
これは公職選挙法を読んで字の如く受け取った理解であり、曲解でも抜け穴でもなんでもなく合法な行為だ。法を知っている、知っていないに関わらず誤った情報によって他人の名誉を著しく傷つけることにもなるので、気をつけたほうが良いだろう。