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武蔵野市、防災備蓄から魚缶詰を廃止 ローリングストックの見直しと今後の課題

防災備蓄食料缶詰
防災備蓄食料缶詰

武蔵野市、防災備蓄から魚缶詰を廃止 今こそ見直しのタイミングではないか

武蔵野市が備蓄している防災食料から、これまで長年備えられていた魚の缶詰やアレルギー対応の缶詰が廃止されていることが明らかになった。2025年3月21日に開かれた予算特別委員会での質疑の中で、担当課よりその理由が示された。

災害時における食の確保は、市民の生命を守るうえで欠かせない。食料の備蓄方針に変更があった以上、その理由と背景を明らかにし、必要があれば見直しを図る必要があると考える。

過去に示されていた「市が備蓄すべきもの」の整理方針

2020年(令和2年度)の決算審査において、武蔵野市は防災備蓄の見直しにあたり、「市が備蓄すべきもの」と「住民が自助で備蓄すべきもの」をしっかりと区別していく方針を示していた。

この方向性に基づき、現在の備蓄状況を確認したところ、令和4・5年度(2022・2023年度)には魚缶詰やアレルギー対応缶詰の買い入れが一切行われていないことが、資料から明らかになった。

こうした備蓄品の購入が中止された背景について、「廃止したのか」「理由は何か」と問いただしたところ、防災課からは以下の答弁があった。

感染症対策資機材とのトレードオフ、他自治体の傾向も背景に

防災課長によれば、当時は新型コロナウイルス感染症の流行を受け、感染症対策資機材の備蓄が急務となった。限られた倉庫スペースを活用するため、他の備蓄品を削減する必要があったという。

また、他自治体の調査結果から、副食である魚缶詰を備蓄している自治体は少数派であったことも考慮された。こうした事情を踏まえて、総合的な判断により魚缶詰の備蓄を廃止したとの説明があった。

食料備蓄の基準と「副食は市の範囲外」とする整理

続けて、「備蓄は何人分・何日分・一食あたり何カロリー」といった基準に基づいて考えるべきではないかという質問に対し、防災課は「スフィア基準」にも触れつつも、備蓄スペースやコストとのバランスを踏まえた調整が必要であると回答した。

そのうえで、感染症対策資機材を優先的に備蓄するため、副食である魚缶詰を外す判断に至ったという。

長期保存・省スペースな備蓄食料は検討されていない

近年では、保存期間が20年を超える長期保存可能な備蓄食料や、フリーズドライで軽量・省スペースな製品が多数登場している。こうした新しい備蓄食料を導入する検討はされなかったのかとの問いには、当時の廃止判断時点では現課長はまだ現職でなかったとのこと。

記録を確認した限り、そうした新製品の導入可能性についての議論はなされていなかったと説明された。また、魚缶詰は3年保存が一般的であり、多くの主食が5年保存であるのに比べて保管効率が悪かった点も一因とされた。

私はこれまで備蓄食料の見直しを提案してきた

私はこれまで、様々な場面で武蔵野市の防災備蓄食料の見直しを提案してきた。

たとえば、現状の備蓄体制では食品が種類ごとに保管されており、災害時に避難所運営組織がそれらを一人分ずつ仕分けて配布する必要がある。これは初動対応における大きな負担となる。

一方で現在は、一人分ごとに梱包された備蓄食料や、保存期間が20年以上の製品、軽量で場所を取らないフリーズドライ食品など、実用性に優れた製品が市場に数多く存在する。これらを積極的に取り入れることで、倉庫スペースの節約、配布作業の簡素化、食品ロスの低減など多くの利点が見込まれる。

今こそ、備蓄政策の見直しを進めるべき時期ではないか

災害も感染症も、どちらも命を守るためには重要な備えである。だからこそ、「どちらを優先するか」ではなく、限られた資源の中で最適な備え方を検討していく姿勢が求められている。

技術や製品の進化は日進月歩であり、過去の備蓄方針が現在でも最善とは限らない。今こそ、災害時の実効性を重視し、現代の実情に即した形での防災備蓄の見直しを進めていくべきタイミングではないだろうか。今後も必要性を訴えていきたい。

関連リンク
家庭内備蓄や非常用持ち出し品を準備しましょう(武蔵野市ホームページ)

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